Jul 25, 2016

No.55 辻野 剛
ガラス作家 / fresco

55_辻野剛A

選定品 A

一柳京子さんのコーヒーマグ

初めて見たの時の印象は、古い南欧の陶器を連想した。
どこか懐かしいような佇まいで、惹き寄せられたのを覚えている。
手に取ってみると意外に和の表情が、土や釉薬の雰囲気の中にあり、実際に使ってみたくなった。

少し大振りで広がりのある形は、口元まで満たすと300ccくらいは収まってしまうマグ。
それはコーヒー好きの私にとってとても惹かれる形だ。
一見華奢な持ち手は、指を通して持ってみると意外としっかりと安心感がある。
何よりこの器の口当たりの良さには驚かされた。

残念ながら2個購入した内、一個を直ぐに不注意で割ってしまった。
しかし手作りであるが故の個体差があり、どしてもその割れた方を捨てられず、
初めての金継ぎに挑戦した器となる。金継ぎは、何度か繰り返すも完成に及ばず。

しかし漆の黒い隙間の色も悪くないと思い、継ぎ目を金で覆うことをやめて
「漆継ぎ」を施した器として今も毎日使っている。

 

 

55_辻野剛B

選定品 B

メーカー不明のコンパス

フロリダの蚤の市で出会った古道具。自分が使うようになってからも四半世紀が経過しているベテラン。
このコンパスが光沢を放ち、コンパスの先端が指し示す場所ももっと明瞭としていた頃が
いつなのかは知る術もないが、何度も曲がった足の部分を修繕した跡は、前のオーナーが
相当酷使していたことは容易に見てとれた。

吹きガラスという仕事は独特で、作業そのものは他のあらゆる物作りとは一線を画すもの。
溶解されたガラスは1200℃近くあり、500℃辺りで固まって動かなくなる。
この温度帯に成形されるガラスは当然手に触れることも、一旦棚に乗せてその姿を確認することもできない。
一定の寸法の物を作ったり、同じ大きさの物同士を溶着させるような場面でも定規を当て、
素材に記しを付るようなことはない。

そこで活躍するのが、このコンパス。
これをガラスに密着させないギリギリの場所に運び、寸法を測る。
反復制作には欠かせない道具だ。

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